エルサルバドル政府、ビットコイン購入の正当性を主張

IMFの圧力に抗しつつ透明性を訴えるブケレ政権の姿勢

エルサルバドル政府は、国家としてのビットコイン（Bitcoin/BTC）保有に関し、過去の購入記録が実際の取引に基づくものであると主張した。

これは、 IMF （国際通貨基金）や一部メディアから購入履歴の正当性に疑問が投げかけられる中での公式見解である。ビットコインの法定通貨化以降、継続的な購入をしきたとするナシブ・ブケレ（Nayib Bukele）政権は、過去のX投稿などを通じて購入履歴を明かしてきた。こうした主張は、外部からの疑問を払拭（ふっしょく）する意図もある。

一方、IMFは以前からビットコインを国家財政に組み込むリスクについて懸念を示してきた。価格変動の大きさや、透明性の不十分さによる信用低下の可能性が指摘されており、初期段階から「金融の安定性や消費者保護に悪影響を及ぼす恐れがある」と警告。こうした批判に対し、政府は明確な購入実績と関連発表を重ねることで、透明性を確保していると訴えている。

政府発表と外部機関で割れる購入認識

7月24日には、同国の ビットコインオフィス が8BTC（約1.4億円相当）の新規購入を発表。

平均取得価格は1BTCあたり11万8,549ドル（約1,758万円）とされ、政府公表の保有総量は6,248BTC、約7億4,000万ドル（約1,097.7億円）相当となった。

新規購入の是非を巡る見解の相違

一方でIMFは、「これらは新規購入ではなく、ウォレット間の資金移動に過ぎない」と反論。さらに、政府ウォレットがリアルタイムで更新されておらず、誤解を招く恐れがあると指摘した。

ビットコイン教育団体「 My First Bitcoin 」創設者のジョン・デネヒー（John Dennehy）氏も、内部アカウント間での送金が新規購入として処理されていることについて「誤解を招く動きだ」と懸念を表明した。

教育投資と制度構築による戦略継続

政府は指摘に対する明確な反論は示していないものの、教育活動の拡充などを通じて、ビットコイン戦略の正当性を強調している。

ビットコインオフィス所長のステイシー・ハーバート（Stacy Herbert）氏は、高校生向け「Node Nation」やビットコイン・ディプロマ・プログラム、技術系人材育成を目的とした「CUBO+」などの取り組みを紹介。さらに、8万人以上の公務員がESIAPという研修を受講していることから、導入に向けた人的基盤も広がっていると述べた。

これらの動きにより、エルサルバドルは仮想通貨先進国としての立場を維持しようとしているが、同時に透明性や国際金融基準への対応が今後の課題として残る。

国際的評価と政策の実効性

エルサルバドル政府はビットコインの利用停止を明言していないが、支持を強調しながらも、水面下では購入実態や保有状況の開示を限定的にとどめていた。こうした二重構造により、金融改革の推進と仮想通貨業界の期待に一定の効果はあったものの、継続性には疑問が残る。

7月に公表された報告書では、同国が2024年2月以降ビットコインを新規購入していないことが確認された。この事実は、経済的圧力にさらされた際、国家戦略としてのビットコイン導入の脆弱性を浮き彫りにするものとなった。

エルサルバドルの事例は、仮想通貨を国家政策として検討するアフリカ、東南アジア、ラテンアメリカ諸国に対しても教訓となっている。制度的な弱さや債務問題、現実経済のニーズとのギャップが、大胆な政策を後退させる要因となった。

ビットコインの技術自体は有効であり続ける一方で、透明性、明確なルール、信頼性あるインフラがなければ、国家戦略として定着させるのは難しい。

結果として、ビットコイン政策は一時的に政権の人気向上や進歩的な印象作りに寄与したが、実際には多額の債務と対外依存の構造的課題の解決には至っていない。