ホワイトハウスが仮想通貨戦略報告書を発表、ビットコイン備蓄に関する詳細は明かさず

包括的な政策提示も、戦略的BTC準備金に進展なし

ホワイトハウス は、米国の仮想通貨・ブロックチェーン市場に関する包括的な戦略を示した166ページに及ぶ報告書を 発表 した。

この報告書は「Strengthening American Leadership in Digital Financial Technology（日本語訳：デジタル金融技術におけるアメリカのリーダーシップの強化）」と題され、規制の合理化、イノベーション支援、監督体制の近代化に向けた具体的提案を示している。

ただし、トランプ大統領が1月に署名した大統領令で注目を集めた「ビットコイン準備金」に関する新たな詳細は含まれておらず、大統領令の文言を繰り返すにとどまり、次のステップや実施スケジュールには言及されなかった。ホワイトハウス当局者は、戦略的ビットコイン準備金および国家による仮想通貨備蓄の計画が依然として進行中であることを明かしている。これには、米政府が合法的に押収したデジタル資産を活用する方針も含まれている。

この戦略は、ホワイトハウスの暗号資産・AI担当責任者デビッド・サックス氏と事務局長ボー・ハインズ氏の主導で策定され、 財務省 、 商務省 、 SEC （証券取引委員会）、 CFTC （商品先物取引委員会）など複数の省庁の意見を集約している。

仮想通貨市場における規制改革の柱

報告書では、規制の断片化を減らすための統一された連邦ライセンス制度の導入、官民パートナーシップによるブロックチェーン基盤の加速、オープンソースのスマートコントラクトとオンチェーンデータの研究支援、AIを活用したコンプライアンスツールの導入などが提案されている。

DeFiとスタートアップ支援、規制当局と税制の明確化

スタートアップ支援策としては、「セーフハーバー」整備に加え、モバイル決済やデジタルIDの普及促進、DeFiの制度見直しやプロトコルの証券登録要件の緩和も検討されている。

開発者が安心して実験できるよう、サンドボックス制度の導入や、即時制裁を回避できるセーフハーバー構築も提案されている。また、SECやCFTCを中心とした規制当局には、取引、保管、コンプライアンスに関するルールの一貫性と透明性を高め、業界成長を阻む遅延を排除する取り組みが求められている。

議会には、自己管理権の法制化やCFTCの権限強化、税制ガイドラインの改訂などが求められている。報告書ではCLARITY法案の可決も推奨されており、これは非証券仮想通貨の監督に関する規制の明確化を目指すもの。すでに下院を通過し、上院で審議中となっている。

さらに、税制面では、仮想通貨を新たな資産クラスとして再定義し、証券や商品とは異なる税ルールの適用や、ウォッシュセールルールの導入も提案されている。

仮想通貨支持派のシンシア・ルミス（Cynthia Lummis）上院議員は、300ドル（約45,000円）未満の仮想通貨取引を非課税とする「デミニマス免除」を含む税制改革案を提出している。

ステーブルコインと銀行規制への言及

ステーブルコインに関しては、米ドルの国際的地位を強化する上での重要性が強調されており、トランプ大統領が署名したGENIUS法の迅速な実施を各機関に促している。

連邦準備制度理事会（FRB）、連邦預金保険公社（FDIC）、通貨監督庁（OCC）などの銀行規制当局には、ステーブルコインやブロックチェーンに関連する銀行活動の範囲を明確化し、銀行免許取得の道筋や仮想通貨関連リスクの資本規制への反映を促すよう求められている。

銀行秘密法（BSA）およびマネーロンダリング（資金洗浄）対策に関しては、仮想通貨企業に求められる報告義務の明確化も提言された。

なお、当初期待されていたビットコイン準備金については、トランプ大統領が3月に発令した創設命令や仮想通貨サミットでの議論にもかかわらず、今回の報告書には具体的な記述がなかった。今後の完全版報告書で詳細が明かされるかどうかは不透明である。

今回の報告書は、連邦レベルでステーブルコインの枠組みを整備するGENIUS法の署名や、下院で可決されたClarity Actといった最新の立法動向と連動しており、米国の仮想通貨政策の包括的・協調的な転換を象徴している。