先週、長らく待たれていたホワイトハウスの仮想通貨政策に関する報告書がついに 公表された 。米国内の仮想通貨関連企業の多くが、証券法に関する不明確な指針のもとで苦しんできたなか、今回の提言はその不確実性に終止符を打つ可能性がある。
報告書は、トランプ政権のデジタル資産作業部会が作成したもので、市場構造、銀行規制、税制、そしてステーブルコインを通じた米ドルの覇権強化といった項目に関する提言がまとめられている。
提言の柱のひとつが、米証券取引委員会（SEC）と商品先物取引委員会（CFTC）との間での管轄権の明確な分担だ。CFTCが仮想通貨の現物市場に対して権限を持つようになる見通しで、これにより長年指摘されてきた両機関の監督重複や矛盾が是正されることになる。
ブロックチェーンを専門とする弁護士であり、トークン化プラットフォーム「ブリッケン」のCEOを務めるエドウィン・マタ氏はコインテレグラフに対し、「各機関が、それぞれの専門性に沿った商品を監督することで、重複や混乱が避けられ、法的な解釈に一貫性が生まれる」と語る。さらに、「米国のように判例法が支配的な国においては、これは極めて重要だ」とも付け加えた。
マタ氏は、これまでの規制上の一貫性の欠如が法的解釈の断片化を招き、しばしば裁判所が規制機関間の対立を調整する状況に陥っていたと指摘する。今回の報告書は、「整合的な法体系を促進し、確固たる法的根拠の上に意見形成が可能となる」と期待を示した。
リップル訴訟の決着が提言の前提に
今回のホワイトハウスの政策提言は、仮想通貨業界でも最も注目を集めた訴訟のひとつ、SECとリップル・ラボとの法廷闘争が決着してから約2か月後に公表された。
SECは2020年12月、リップル社が未登録の証券を販売し、13億ドルを調達したとして提訴。長期にわたる争いの末、2025年3月19日、リップルのCEOであるブラッド・ガーリングハウス氏は、SECが控訴を取り下げたことを明かし、これを「企業と仮想通貨業界にとっての大きな勝利」と 位置づけた 。
これに先立ち、2023年7月には裁判所が、XRPは一般投資家向け販売においては証券ではないと認定した一方、機関投資家への販売については証券に該当すると 判断 。2024年8月にはリップルに対し1億2500万ドルの制裁金が 科されていた 。
さらに2025年6月12日には、リップルとSECが共同で、エスクロー口座に保管されていた1億2500万ドルを和解金として支払うための申立書を裁判所に 提出している 。
SECとCFTCの分担明確化のインパクト
仮想通貨取引所ビットフィネックスのアナリストによれば、今回のホワイトハウスによる政策提言は、仮想通貨業界が長年抱えてきた「曖昧な証券規制」への不安を和らげ、米国内における仮想通貨イノベーションを妨げてきた「主要な障壁」を取り除く可能性があるという。
アナリストはコインテレグラフに対し、「今回の報告書は、『同じリスクには同じルールを』というトランプ大統領の方針を反映しており、規制のギャップを埋め、CLARITY法案のような立法措置を通じて仮想通貨を正当化する動きにつながる」と語った。
一方で、懸念も残るとし、報告書には「規制を順守しない企業へのSECの取締り強化」、「米国によるビットコイン準備資産導入に関する具体性の欠如」、「規制の厳格化をめぐって仮想通貨業界内での分断が生じる可能性」などの懸念があると指摘する。
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