主なポイント
- この提案は、「レイトブロック」ペナルティを導入し、マイナーがセルフィッシュマイニング戦略中にブロックを隠すことを防ぎます。
- リワードスプリッティングにより、正直なマイナーによる孤立ブロックも作業に応じた報酬を受け取れるようになります。
- XMR価格は攻撃開始以降20%下落し、$260を下回って取引されている一方、「プライバシーコイン」に対するGoogle検索は過去最高を記録しています。
Moneroは、Coinspeakerが報じているように、セルフィッシュマイニング戦略、または攻撃に苦しんでいます。この攻撃はSergey Ivancheglo（Come-from-Beyond/CFB）が率いるQubic Poolによって行われています。この状況下で、特にMonero Research Labの開発者を中心としたコア貢献者たちは、Qubicの戦略を緩和する、または将来的にこのような攻撃を防ぐためのアイデアを議論しています。
過去数週間に提案・議論されたさまざまなアイデアの中で、8月27日にtevadorによって提案された「Publish or Perish」提案が、Monero支持者の間で人気を集めています。この提案は、GitHubのmonero-project組織のresearch-labリポジトリにissue #144として掲載されており、まだプルリクエストとして正式化されていません。この提案は、Ren Zhangによる2017年2月発表の論文「Publish or Perish: A Backward-Compatible Defense Against Selfish Mining in Bitcoin」に基づいています。
セルフィッシュマイニング対策（Publish or Perish）、issue #144 | 出典: GitHub, moneroproject/research-lab
全体として、この提案は、攻撃者が51%未満のハッシュレートしか持たない場合、セルフィッシュマイニングを非収益化し、ネットワークの安定性を促進する可能性があります。Unstoppable WalletのResearch & Strategy LeadであるDan Dadybayoは、この件についてCoinspeakerに独占コメントを寄せています：
「Moneroの強靭性はプライバシーだけでなく、安全かつ公正なマイニングプロセスにも依存しています。現在、単一のプールが約33%のハッシュレートを支配しているため、セルフィッシュマイニングは現実的な脅威となっています。正直なマイナーの収益は減少し、ネットワークへの信頼も揺らぎかねません」とDan Dadybayoは説明します。「Publish or PerishやReward Splittingのような新しい提案は重要な一歩です。これらはセルフィッシュマイニングの収益性を大幅に下げ、正直なマイナーの収益を守ります。ソフトフォーク、ハードフォーク、または協調的な検出型マイニングを通じて、これらの施策はMoneroの信頼性を維持し、ネットワークを攻撃から強固に保つためのものです。」
Monero Research LabによるPublish or Perish提案とは
要約すると、tevadorの提案は2つのサブ提案から成り立っています。彼が投稿したissueで説明している通り、(1)「正直なマイナーの多数派」によって承認される、後方互換性のあるシンプルなアップグレードを必要とするソフトフォーク、(2)より高度な調整を必要とし、ブロックチェーンを分岐させる可能性のある非後方互換性の複雑なアップグレードを必要とするハードフォークです。
ソフトフォーク提案、すなわちPublish or Perish（PoP）提案は、「レイトブロック」概念を導入し、マイナーがマイニングしたブロックのブロードキャストに時間をかけすぎた場合にペナルティを課します。これは、セルフィッシュマイニング戦略の重要な部分、すなわち複数のブロックをステルスモードでマイニングし、それらを同時にブロードキャストしてチェーンを再編成（reorg）し、競合マイナーによって既にマイニング・ブロードキャストされたブロックを無効化する行為に直接対処します。
こちらはセルフィッシュマイニングのELI5（分かりやすい説明）です。
現在QubicがMoneroに対して使っている攻撃👇お母さんには3人の子供がいます：Alice、Bob、Carol。
お母さんは、最初に宿題を終えた子にキャンディをあげると約束します。🍬Aliceは宿題がとても速いです。
しかし、彼女はそれを伝えません… pic.twitter.com/PYCC72wj5E— Vini Barbosa (@vinibarbosabr) 2025年8月26日
tevadorによれば、これはネットワークのハッシュレートの51%未満を持つ悪意ある存在による小規模な試みを緩和し、少なくとも3ブロック深いreorgを必要とします。しかし、Qubicは2025年8月にすでに6ブロックや9ブロック深いreorgを展開しているため、依然としてセルフィッシュマイニングは可能ですが、収益性は低下します。
ハードフォーク提案は、PoP提案を拡張し、Reward Splitting（RS）を追加することで、悪意あるマイナーが少なくとも20ブロック以上正直なネットワークを上回らない限り、セルフィッシュマイニング攻撃の経済的インセンティブを排除します。Reward SplittingはMoneroのコンセンサスにいくつかの変更を導入し、報酬分配の仕組みを根本的に変え、すべてのマイナーに影響を与え、公平性とネットワークの安定性を促進します。正直なマイナーは、現在のMoneroの状態ではセルフィッシュマイナーだけが受け取るはずだった報酬のうち、自分の有効だが孤立したブロックにも比例した報酬を直接受け取れるようになります。
Monero Research Labの開発者たちは、8月29日に公開ミーティングでこの提案を議論し、その議事録は現在一般公開されています。tevadorのアイデア以外にも、参加者はMoneroをハイブリッドチェーンにし、proof-of-stakeに基づくファイナリティレイヤーを追加するという物議を醸す提案にも言及しました。ACK-Jとして知られる開発者の一人は、このアプローチについて懸念を示し、XMRの初期分配が「ごく少数のアーリーアダプターに過度に有利だった」と述べています。
「今となってはどうしようもありませんが、このことを知りながらPoSに切り替えるのは私には正気の沙汰とは思えません。私は現在、tevadorのPoW維持、手数料引き上げ、セルフィッシュマイニングへの創造的な解決策の研究という提案を支持しています。」
Monero（XMR）価格分析
Monero XMR $257.0 24時間ボラティリティ: 1.1% 時価総額: $4.74 B 24時間取引高: $69.57 M は、本稿執筆時点で1コインあたり$260をわずかに下回る水準で取引されており、このレベルと$285の間で安定したレンジを形成しています。主要なプライバシーコインは、セルフィッシュマイニング攻撃が実行され始める前の2025年7月の取引レンジから約20%下落しています——ただし、攻撃自体はすでに公に議論されており、Sergey IvanchegloがQubicの名の下にその意図を公表していました。
日足チャートは、XMRが米ドルに対して短期的な下落トレンドにあり、暗号資産全般で重要なテクニカル指標である50日指数移動平均線（1D50EMA）を上抜けできていないことを示しています。
XMR/USD 1D価格チャート（2025年8月29日時点）| 出典: TradingView
この提案は、Qubicによるセルフィッシュマイニング攻撃への対策が現実味を帯びてきたことで、Moneroにとって重要な転換点となります。これにより、プロジェクトを取り巻く不確実性が解消されつつあります。ポジティブなシグナルがXMR価格の回復に必要な勢いを与える可能性がある一方、さらなる混乱が逆の結果をもたらす可能性もあります。
「プライバシーコイン」に対するGoogle検索が過去最高に達していることから、Moneroにとって追い風となる可能性があります。これはCoinspeakerが以前に報じた通りです。
