世界最大の資産運用会社であるBlackRockが、再び1億3,500万ドル相当のEthereumを暗号資産取引所Coinbaseに送金しました。
この1週間、暗号資産市場で最も注目を集めた出来事は、オンチェーンのクジラによる頻繁な資金移動でした。ブロックチェーンデータの監視によると、2025年12月3日、世界最大の資産運用会社BlackRockはCoinbase Primeに44,140ETH（約1億3,536万ドル相当）を入金しました。
わずか1か月前にも、同様の動きが何度も見られました。11月4日、BlackRockは2億9,000万ドル超のBitcoinとEthereumをCoinbaseに移動し、11月17日には再び4億7,000万ドル相当のBitcoinと1億7,600万ドル相当のEthereumを入金しました。これら2回の送金は、暗号市場が急落し流動性が逼迫していた時期と重なり、市場ではベア（弱気）シグナルを強める動きとして受け止められ、相場の変動を加速させました。
1. 事件の核心
● 今回の送金自体は非常に明確です。複数のブロックチェーンデータ監視プラットフォームによると、BlackRockは12月3日にCoinbase Primeへ44,140ETHを入金しました。
● 取引時点の市場価格で換算すると、この資産は約1億3,500万ドルに相当します。送金はオンチェーン監視によって捉えられ、暗号コミュニティや金融メディアで瞬く間に拡散されました。
2. 市場の解釈
● このような大規模送金に対する市場の第一反応は、しばしば懸念です。従来のロジックでは、大量の暗号資産をプライベートウォレットから取引所へ移動するのは、売却や取引の準備であることが多く、市場に直接的な売り圧力をもたらすと考えられています。
● 特に送金元がBlackRockのような金融大手である場合、その動向は機関投資家のセンチメントのバロメーターと見なされます。多くのトレーダーが市場のオーダーブックの深さやスプレッドの変化に注目し、価格変動を予測しようとしています。
● しかし、より深い分析は別の可能性を示しています。マーケットメイク大手Wintermuteの創業者Evgeny Gaevoyは、この種の送金は実際には「非常に遅行性の強い指標」であると指摘しています。
3. 背後のメカニズム
● 市場の一般的なパニックは、ETFの運用メカニズムに対する理解不足から生じている可能性があります。BlackRockによるこれらのオンチェーン送金は、実際には現物Bitcoin ETF（IBIT）および現物Ethereum ETF（ETHA）の標準的な運用プロセスにおける決済段階です。
● ETFで純資金流出が発生した場合、マーケットメイカーはETF売却者からシェアを買い取り、BlackRockに償還申請を提出し、ETFシェアを実際のBitcoinまたはEthereumに交換します。このプロセスには通常1日の遅延があります。
● 重要なのは、実際の市場での売り圧力はオンチェーン送金が可視化された時点ではなく、マーケットメイカーがリスクヘッジのために外部市場で売却を行う時点で発生するという点です。つまり、個人投資家がオンチェーンで大規模送金を目にした時には、関連する売り圧力はすでに1日前に市場で消化されている可能性があります。
4. パターン分析
最近のデータを振り返ると、BlackRockがCoinbaseへ大規模な暗号資産を送金することが一つのパターンとなっていることが分かります。
● 送金頻度が高く、規模も大きい。ほぼ毎週大規模な移動が発生。BlackRockは過去1か月で少なくとも4回、顕著な規模の資産移動を行っており、1回あたりの金額は数億ドル規模です。
● ETHとBTCが同時に大量に動かされているが、ETHの割合がより顕著。複数回の記録で、ETHの送金量が非常に多く、数万枚に達することもあり、BTCも安定して大規模な流動性を維持しています。
● オペレーションは「バッチ化＋周期化」の特徴を示す。送金間隔は多くが7～10日程度で、金額も集中しており、これは「定常的なリバランス」や機関投資家レベルの資金管理プロセスである可能性が高く、単発の一時的なイベントではありません。市場センチメントへの影響は大きいものの、一貫したベアトレンドをもたらしてはいません。
大規模な取引所への入金は通常、潜在的な売り圧力と見なされますが、過去数回の事例では明確な売却には直結せず、むしろETFやカストディポジションの定例的な資産移動のように見えます。
以下は過去1か月の主な送金記録です：
1. 12月3日：44,140ETH（約1億3,500万ドル）を入金。
2. 11月24日：2,822BTC＋36,283ETH（約3億4,500万ドル）を入金。
3. 11月17日：再びBTCとETHを大規模入金、総額約6億4,600万ドル。
4. 11月4日：1,742.8BTC＋22,681ETH（約2億9,300万ドル）を入金。
5. 市場の見解
● BlackRockによる頻繁な大規模送金を受けて、暗号市場のアナリストは異なる立場を取っています。一部のトレーダーは、これは強いベアシグナルであり、機関投資家がポジションを減らすか、売却準備をしていることを示唆していると主張します。
● 一方で、別の見方では、これは暗号資産市場が成熟し、伝統的な金融システムに受け入れられつつある証拠だとされています。BlackRockなどの機関投資家の参入は、市場にかつてない流動性と正当性をもたらしています。この見解では、機関投資家の長期的な関与が、暗号資産を投機的な周辺資産から、ポートフォリオに組み込める主流資産クラスへと変化させると考えられています。
● 暗号データ分析プラットフォームCryptoQuantの分析によると、2023年以降、少額のBitcoinを保有する個人投資家の数は減少し、機関投資家の影響力が着実に強まっています。
● この変化は米国の規制環境の変化と密接に関連しており、特に現物Bitcoin ETFの承認により、機関投資家は取引所と直接やり取りすることなく暗号資産に投資できるようになりました。
6. 投資の視点
● 一般投資家にとって、BlackRockなどの機関投資家による大規模オンチェーン送金を理解するには、表面的な現象を超えて考える必要があります。市場アナリストが指摘するように、これらの送金データはETFの日々の資金流入・流出データと組み合わせて分析するのが最適です。
● 大規模なオンチェーン送金を目にした際、投資家はまず関連ETF商品の前営業日の資金フローを確認し、すぐに追加のベアシグナルと解釈しないようにすべきです。
● この分析手法は、投資家が不要なパニックを避け、市場の実態をより正確に把握するのに役立ちます。暗号市場がますます機関化する中で、伝統的金融の運用ロジックと暗号資産市場の特性が交差するポイントを理解することが、投資判断の重要な根拠となります。
● 金融大手のオンチェーンでの一挙手一投足は確かに注目を集めますが、成熟した投資家はすでにこうした表層を見抜き、市場の本当の鼓動を探し始めています。
Bitcoinは送金と同時期に4.5%下落し、104,000ドルを割り込み、Ethereumも5.5%下落して3,390ドルを下回る価格で取引され、市場は独自の方法でこれらの情報を消化しています。
また、BlackRockのCEOであるLarry Finkは最近、かつてのBitcoin反対の立場が誤りだったことを公に認め、同社が「積極的にBitcoinを受け入れている」と述べました。10兆ドルの資産を運用するこの巨人の暗号ストーリーは、明らかにまだ続いています。
