x402 V2リリース：AIエージェントが「クレジットカード」を持ち始めたとき、どのプロジェクトが再評価されるのか？

執筆：David，深潮 TechFlow

最近の暗号資産市場は、典型的な「ガーベッジタイム」に突入しており、市場のセンチメントは弱気と不安の間を行き来しています。

明確な富の効果が見られない静かな時期には、局所的なホットなナラティブに注目するのもコストパフォーマンスの良い選択肢です。例えば、今もなお継続的に構築され、密かにアップデートされているインフラなどです。

約1～2ヶ月前、私たちは比較的早い段階でCoinbaseが発表したx402プロトコルおよび関連プロトコルERC-8004を紹介しました。当時も1～2週間のチャンスウィンドウがあり、関連ナラティブのトークンは大きく値上がりしました。

（関連記事： GoogleとVisaも参入、過小評価されているx402プロトコルにはどんな投資機会が潜んでいるのか？ ）

当時の分析では、x402 v1バージョンのコアナラティブは「AIがウォレットを持つ」という問題を解決した点にあると判断しました。これによりAI AgentはシンプルなAPIコールでオンチェーン決済を完了できるようになりました。これは当時、BaseチェーンがAI分野において重要な一手を打ったと見なされていました。

ロジックは検証されましたが、x402は単一チェーン環境と単一決済モデルに制限され、大規模な爆発には至りませんでした。

そして昨日、誰も気づかなかったのですが、x402の開発者がひっそりとV2バージョンをリリースしました。

もしV1がAIに「支払い能力」を与える実験的ツールだったとすれば、V2のアップデートログからはより大きな野心が読み取れます：

全チェーン対応、暗号・非暗号決済のハイブリッドレール、そして極めて重要な「先にサービス、後払い」の信用能力。これらの特徴は単なる修正ではなく、「機械商業社会」に本当に適した金融基盤を構築しようとしているように見えます。

まさにAIナラティブに合致しています。

今の暗号市場はもう稼げないと言う人もいますが、生き残っているプロトコルのアップデートを事前に知っておくのも悪くありません。

もしかしたら再びAlphaを見つけられるかもしれません。

AIにウォレットを持たせるから「先に享受、後払い」へ

x402が何だったか忘れてしまった方のために、402プロトコル初期バージョンの役割を一言で説明します：

「インターネットプロトコルに眠る402コードを復活させ、AIが人間のようにカード決済できるようにし、暗号ウォレットを通じてAPIを呼び出し、自動でデータやサービスを購入できるようにする」。

V1バージョンはこのロジックを実現しましたが、実際の運用では非常に重たく感じられました。

もしあなたのAIエージェント（Agent）が推論やデータ取得のたびにオンチェーンで署名し、Gasを支払う必要があると、この「即時決済・即時納品」のアトミック取引モデルは効率が極めて低く、コストも高くなります。

このため、V1は商業トラフィックを支えるインフラというより、技術デモに近いものでした。

そしてV2のコアな変化は、まさにAIの商業行為を「ノーマル化」しようとしている点にあります。

V2のドキュメントを精読した結果、最も注目すべき変更点は遅延決済メカニズムの導入だと考えます。

原文ではこう説明されています：

これは技術的に聞こえますが、金融用語に翻訳すると：

サービスプロバイダーとAIの間に「記帳」関係を構築できる：AIは認証を経てサービスを利用（例えば連続で1000回計算リソースを呼び出す）、システムがバックエンドで記帳し、最後に一括で決済する。

これは一見Gas代を節約するだけに思えますが、ナラティブの観点から見ると、AI Agentが「信用」を持ち始めたことを意味します。

「先に享受、後払い」が許されると、投機やナラティブの細分化が進みます。例えば、市場はこのAgentのデフォルトリスクを評価する必要があり、新たに誕生したAgentに保証を提供する人が必要になります。

これは実質的にAgentFiの基盤を築いており、単なる決済ツールから信用・金融レイヤーへと発展しています。

この隠れた「信用レイヤー」以外にも、V2はインフラ面で2つの顕著な大きなアップデートがあります：

1. 「Base優先」から「デフォルトでマルチチェーン」へ (Multi-chain by default)： V1はBaseエコシステムの実験色が濃かったですが、V2は汎用的なHTTPヘッダーインタラクション標準を定義しました。つまり、Solana、Ethereumメインネット、L2など、どこでもこの標準に適合すれば接続可能です。これにより資金の「クロスチェーン孤島」が解消されます。

2. ハイブリッドレール (Hybrid Rails)： V2は法定通貨と暗号通貨の壁を打ち破りました。AgentはUSDCで支払い、x402ゲートウェイを通じて従来のクラウドサービスプロバイダー（AWS, Google Cloud）は直接法定通貨を受け取ることができます。これはAIがオンチェーンからリアルワールド調達へ進む重要な一歩です。

今回のイテレーションの幅を直感的に理解するため、V1とV2のコア比較表をまとめました：

まとめると、V2バージョンはBaseチェーン上の「おもちゃ」にとどまらず、AI経済圏のVISAネットワークを目指し、AIに全ネットワーク共通の「クレジットカード」を発行しようとしているようです：

1. 「遅延決済」で高頻度取引の効率問題を解決。

2. 「マルチチェーン対応」で資金調達問題を解決。

Alphaを探しているプレイヤーにとって、筆者はこれが今後再評価される2つのセクターを示唆していると予想します：

1. これらのAIに信用格付けや保証を提供するのは誰か？ すなわちAI信用情報レイヤー

2. このようなストリーミング決済で計算リソースをAIに最初に売るのは誰か？ DePINの決済実装に関係する可能性

どのプロジェクトがV2の追い風に乗っているのか？

x402 V2のコアアップグレードロジックを理解した後、ターゲットを探す思考は非常に明確になります。

もしx402 V2がAI経済圏の「Visa決済ネットワーク」なら、以下の3種類のプロトコルがこのネットワークを支える重要なノードとなります。

第一類：AIの信用情報局と履行レイヤー

V2が「先にサービス、後決済」のサブスクリプションモデルを導入したことで、直接的な課題が生まれました：

サービスプロバイダーは、なぜ匿名のAI Agentが月末にきちんと支払うと信じられるのでしょうか？

この問題を解決するには2つの保証が必要です：一つは信用スコア、支払い能力の有無を判断するもの、もう一つは履行検証、仕事がきちんと行われたかを判断するものです。これは以前紹介したx402とERC-8004ナラティブの交差点でもあります。

明らかにナラティブに合致するプロジェクトには：

• Spectral ($SPEC)，@Spectral_Labs

ポジショニング： オンチェーン信用スコアリングとマシンインテリジェンスネットワーク。

関連点： SpectralのコアプロダクトはMACROスコア（オンチェーンFICOに類似）。x402 V2環境下では、サービスプロバイダーは信用スコアが基準を満たすAgentのみ「後払い」モードを開始できるように設定できます。これは「掛け売り」ロジック成立の前提です。

Spectralが推進するInferchainは、Agent検証問題の解決を目指しており、x402 V2の決済ニーズと表裏一体です。

• Bond Credit，@bondoncredit

ポジショニング： AIエージェント専用の信用貸付レイヤー。

関連点： 現時点で「Credit for Agents」を掲げる数少ないプロジェクト。新しいAgentがx402 V2経由でクラウド計算リソースを利用したいが資金がない場合、Bond CreditはTEEで過去のパフォーマンスを監視し、信用保証を提供、サービスプロバイダーが「遅延決済」を安心して開始できるようにします。

注意点として、プロジェクトは初期段階なのでDYOR推奨。ただしセクターは非常に垂直で、AI貸付の空白を埋めています。

• CARV（$CARV)，@carv_official

ポジショニング： モジュラー型データとIDレイヤー。

関連点： 「私は誰か」という問題を解決。x402 V2はマルチチェーン対応で、CARVのID標準によりAgentは異なるチェーン上でも統一されたIDを維持できます。

公式Twitterによると、すでに実際の決済シナリオテストが行われています。

ちなみに、ここでの「履行検証」ロジックは、前回のERC-8004標準記事での私たちの判断を再度裏付けています。

x402 V2は「資金フロー」の決済を担当し、ERC-8004標準は「ビジネスフロー」の検証を担当します。

サービスの提供が確認されて初めて遅延決済が発動します。当時言及した関連セクターロジックは、今回のx402 V2アップデートでも有効であり、再度図解を掲載します：

（関連記事： x402の競争激化、ERC-8004で新たな資産機会を事前に発掘 ）

第二類：AIの「インフラ」と検品役

x402 V2の「セッションベース決済（Session-based）」は高頻度決済の摩擦を大幅に低減しました。理論上、計算リソースを販売するDePINや、「計算リソースが偽造されていない」ことを証明する検証プロトコルに有利です。

典型的な既存プロトコルとして：

• Akash Network ($AKT)

ポジショニング： 分散型計算リソース市場。

関連点： 計算リソースのレンタルは典型的な「秒単位/量単位」課金シナリオ。x402 V2はAIがUSDCや法定通貨チャネルでストリーミング決済できるようにし、AIによる計算リソース調達のハードルを大幅に下げました。

ロジック的には、受益は受動的で関連性はそれほど高くありません。

• Giza（$GIZA)，@gizatechxyz

ポジショニング： 検証可能な機械学習プロトコル（ZKML）とDeFi Agentアプリ。

関連点： Gizaは二重の役割を持ちます。技術レイヤーとしては、決済前の「検品役」です。x402で高額な推論費用を支払う前に、GizaのZKML技術で「モデルが確かに要求通りに動作した」ことを証明できます。

アプリケーションとしては、フラッグシッププロダクト（ARMAなど）はx402のような決済レールで動作するDeFi Agentそのものです。

第三類：AIの「アセットサイド」と実行レイヤー

ここでのナラティブロジックは、x402 v2がAI決済をより良くするなら、誰がこれらのAgentを生産しているのか？誰がこれらのツールでユーザーの利益を生み出しているのか？

おなじみのVirtuals Protocol ($VIRTUAL)に戻ってきました。

トップクラスのAI Agent発行プラットフォームとして、x402 V2はVirtuals上のAgentに「クロスチェーンパスポート」を与えたようなものです。VIRTUAL系Agentの保有者は、今後x402プロトコルを通じてAgentをSolanaで新規上場に参加させたり、メインネットでアービトラージさせたりできます。

• Brahma，@BrahmaFi

ポジショニング： オンチェーン実行と戦略オーケストレーションレイヤー。

関連点： Brahmaはユーザーの複雑なDeFi戦略の自動実行が主なビジネスであり、x402を使って様々なKeeper（実行者）のGas代や実行費用を統一して支払うことで、完全な自動化を実現できます。

これはDeFAI関連のシナリオ適合にもつながります。DeFiからAgentFiへの転換のための重要なインフラです。

まとめ

最後に、視点を戻してx402 V2リリースのシグナルを冷静に考えてみましょう。

x402は技術的には決済プロトコルですが、暗号文脈では多くの金融的な使い方を引き出すことができます。

V2は「遅延決済（信用）」とマルチチェーンアカウントを導入することで、AIにもバランスシートの概念を持たせることができます。

Agentが「先にサービス、後払い」を許されると負債を持つことになり、クロスチェーンで複数の資産を保有できれば資本を持つことになります。

資産と負債を持つようになれば、AIはもはや単なるコードスクリプトではなく、独立した経済体となり、プレイの幅が広がります。

これこそがAgentFi（代理金融）ナラティブの真の起点です。

投機の観点では、今の市場の弱気期に、将来AIがどのように複雑な商業帝国を築くかを夢想する必要はなく、最も基礎的なナラティブロジックの変化に注目すれば十分です：

これまで私たちはAIの「モデルレイヤー」、つまり「誰が賢いか」に投資してきましたが、これからはAIの「金融レイヤー」、つまり「誰がより裕福か」に投資することになります。

x402 V2は単なる号砲です。相場が良くなれば、AIにIDを発行するプロジェクト、AIの信用情報を作るプロジェクト、計算リソースを小売商品化するプロジェクトに注目しましょう。

これらのプロジェクトはいずれも非常に魅力的で、反証が難しく、ナラティブの先見性を持っています。

AIがツールから経済体へとナラティブアップグレードする過程で、これらの「シャベル売り」プロジェクトは、ブル相場でもベア相場でも最初の通行料を徴収することになるでしょう。