YieldBasis (YB)とは？ボラティリティの高い市場に安定したリターンをもたらすDeFiプロトコル

分散型金融（DeFi）の世界は、クリプト投資家に新たな扉を開きましたが、それにはトレードオフも伴います。価格の変動性や複雑な運用メカニズム、そして常につきまとうインパーマネントロス（impermanent loss）のリスクなどにより、イールドファーミングは受動的収入というよりリスク管理に近いものとなっています。たとえば、市場が自分に有利な方向に動いた場合でも、AMM（自動マーケットメイカー）へ流動性を提供すると、単にトークンを保有している場合に比べて利益が劣ることもあります。

こうした環境のなかで、より安定し予測可能なリターンへの需要はかつてないほど高まっています。そこで登場するのがYieldBasis（YB）です。YieldBasisは、BTCのような価格変動の激しい暗号資産にも安定的な利回りをもたらすことを目指した次世代DeFiプロトコルで、Curve Financeのインフラを基盤とし、2025年にローンチされました。YieldBasisは、従来の「インパーマネントロスによる足かせ」を回避しつつ、オンチェーンでイールドを得る新しい手段を提供しています。それでは、YieldBasisとは一体何なのか、どのように機能するのか、詳しく見ていきましょう。

YieldBasis（YB）とは？

YieldBasis（YB） は、暗号資産保有者がインパーマネントロスを負うことなく安定したオンチェーンイールドを得られるように設計された分散型金融（DeFi）プロトコルです。2025年初頭、Curve Finance創設者のMichael Egorovによってローンチされ、Curveエコシステムと深く統合されています。

YieldBasisの核となるイノベーションは、レバレッジ流動性提供の活用にあります。従来のAMMでは、流動性提供者（LP）は資産比率の変化によるリスクを負いますが、YieldBasisは、その基盤資産（たとえばBTC）の価格を1:1で追跡するポジションを構築します。これは、預け入れたBTCと同額（ドル建て）のcrvUSD（Curveネイティブステーブルコイン）を組み合わせ、自動的に2倍のレバレッジ比率を維持することで実現しています。

ユーザーは、BTCを預け入れるとybBTCなどの特別な「ラップド」トークンを受け取ります。これらのトークンは、ダイナミックにリバランスされるレバレッジ流動性プールへの持分を表します。BTCの価格が変動すると、そのポジションは自動的に調整され、2倍のターゲットを維持しつつインパーマネントロスによるパフォーマンス低下を避ける仕組みです。

YieldBasisは、Curve DAOの強力なコミュニティサポートと支援のもとで立ち上げられ、ローンチ時にはプールを運用するために多額のcrvUSD与信枠も得ています。ビットコインを中心とした初期導入からスタートし、今後は同様の設計フレームワークを用いてETHやその他資産への展開も計画されています。

YieldBasis（YB）の仕組み

YieldBasisは、流動性提供に典型的に伴うインパーマネントロスを回避しながら、価格変動のリターンにエクスポージャーを持つことができるよう設計されています。CurveのAMMプールを活用し、2倍のレバレッジをかけた流動性ポジションを作成し、ダイナミックにリバランスすることでこれを実現しています。こうしたポジションは基盤資産と1:1で価格を追跡するため、BTC価格が上昇すれば、そのポジションも等しく上昇します。これは従来のAMMでLPが資産比率の変動で損をするリスクとは異なります。

具体的な仕組みは以下の通りです：

● BTCを預け入れる： ユーザーはまず、YieldBasisプロトコルにBTCを預け入れます。

● 2倍レバレッジのセットアップ： YieldBasisは、同額のcrvUSD（Curveネイティブステーブルコイン）を借り入れ、それを預入資産と組み合わせてBTC–crvUSDの50/50流動性ポジションを構築します。このセットアップによって2倍のレバレッジが生まれます。

● 自動リバランス機構： 価格が変動すると、リバランス用AMMと「VirtualPool」システムを用いてプロトコルが自動的に2倍のレバレッジ比率を維持します。これらの仕組みはアービトラージのインセンティブに基づき、ユーザーの介入なしでターゲットレバレッジを回復します。

● ラップドトークン発行（ybBTC）： 預け入れの対価として、ユーザーはybBTCなどのラップドトークンを受け取り、レバレッジLPにおける自分のポジションを表します。

● 手数料の発生とイールド： 資金はアクティブなトレーディングプールで運用されているため、ユーザーは取引手数料の一部を受け取ります。

● YB報酬のためのオプションステーキング： ybトークンをプロトコル内でステーキングすることで、追加のYBトークン報酬を得ることも可能です。これにより流動性提供に対するインセンティブがさらに強化されます。

このように、レバレッジ、自動リバランス、手数料収益を一体化したシームレスなシステムによって、YieldBasisは「HODLフレンドリー」なイールド戦略を実現します。資産上昇の機会を犠牲にせず、インパーマネントロスの余計なリスクを負うことなく利益を狙いたいユーザーに最適です。

YieldBasis（YB）のトークノミクス

YieldBasis（YB）トークン配分

YBトークンはYieldBasisエコシステムの基盤となるもので、ユーティリティトークンとしてもガバナンストークンとしても機能します。最大供給量は10億枚に固定されており、流動性提供者へのインセンティブ、長期プロトコル参加者への報酬、意思決定プロセスの原動力として用いられます。ローンチ時点で約8790万YBが流通しており、全体供給量の9%未満です。残りはベスティングスケジュールやプロトコル開発・エコシステム成長のために確保されています。多くの次世代DeFiプロジェクト同様、YieldBasisはvote-escrowモデルを採用しており、ユーザーはYBトークンをロックすることでveYB（vote-escrowed YB）を受け取り、ガバナンス権と取引手数料分配を得ることができます。

ガバナンスに加え、YBはステーキングやエミッション（新規発行）でも中心的役割を果たします。YieldBasisプールにBTCなどを預け入れると、ybBTCなどのLPトークンが発行されます。これらのトークンをステーキングすることでYB追加報酬を長期的に獲得できます。さらにveYB保持者には追加インセンティブが与えられ、流動性提供者とプロトコルの長期ヘルスの整合性が高められます。このモデルは徐々にトークン流通量を減少させていく設計であり、持続可能性を維持しつつ、初期参加者やアクティブユーザーにも十分な報酬を与える仕組みとなっています。

YieldBasis（YB）価格予想（2025年、2026年〜2030年）

YieldBasis（YB）本日の価格

出典：CoinmarketCap

本稿執筆時点で、YieldBasis（YB）は主要取引所で約$0.72で取引されています。今後の価格見通しは当然ながら推測的な要素が強く、プロトコルの採用状況、市場センチメント、より広範なクリプト市場の動向に大きく左右されます。

● 2025年価格予想： YieldBasis（YB）は、ローンチ後のボラティリティやトークンアンロック、初期市場の思惑の中で$0.68〜$0.85のレンジで推移する可能性があります。

● 2026年価格予想： veYB需要や普及の拡大により、プロトコルへの流動性流入が進み、$0.90〜$1.40への上昇が見込まれます。

● 2027年価格予想： プロトコルが成熟し、ユースケースが拡大すれば、YBは$1.30〜$2.00の水準まで達するかもしれません。深いプール利用と安定したイールドが下支えとなります。

● 2028年価格予想： 強気相場やDeFi全体の成長があれば、Layer-2統合やクロスチェーン展開なども背景に、YBは$1.80〜$2.80に上昇する可能性があります。

● 2029年価格予想： トークン新規発行（エミッション）の減少とガバナンス利用の強化により、価格は$2.50〜$3.50まで上がると考えられます。

● 2030年価格予想： YieldBasisが基盤的なイールドプラットフォームとして定着し、安定収益を上げ続ける場合、YBは$3.20〜$4.50の価値に評価される可能性もあり、プロトコルの長期的な成功が反映されます。

まとめ

YieldBasis（YB）は、派手なAPYや目新しいギミックを約束するのではなく、より本質的な価値、すなわち長期クリプト投資家にとって資産エクスポージャーを犠牲にしない構造化されたイールド獲得方法を提供しています。インパーマネントロスを無力化し、Curveエコシステムへ直結することで、親しみやすくも洗練されたDeFi体験を実現し、流動性提供の次なるステップとして自然な進化を遂げています。

今後の課題も多く残されています。ybBTCのようなレバレッジLPトークンをユーザーが受け入れるか、エミッションが減る中で深い流動性と競争力あるイールドを維持できるか。こうした問いがYBの今後を左右します。しかし現時点では、YieldBasisはイノベーションと実用性を両立した魅力的な存在と言え、DeFi分野で静かに革命をもたらす可能性のあるプロジェクトの一つでしょう。