現実世界に賭ける、これら8つの予測市場はどのようなビジネスをしているのか？

作者：Viee，Biteye コア貢献者

 

最近、予測市場分野の注目度が急上昇しています。10月初旬、ニューヨーク証券取引所の親会社ICEはPolymarketに最大20億ドルの投資を発表し、投資後の評価額は約90億ドルとなりました。数日後、米国のコンプライアンス予測市場Kalshiも3億ドルの資金調達を完了し、評価額は50億ドルに上昇しました。

巨額の資金調達に伴い、KalshiやPolymarketなどの主要プラットフォームの取引量も急増しています。Kalshiは今年の年間取引額が500億ドルに達すると予想されており、世界市場シェアは60%を超え、初めてPolymarketを上回りました。

暗号資産の話題が徐々に冷え込み、規制の動きが強まる中で、なぜ予測市場が再び注目されているのでしょうか？そのプロダクト形態は本当に質的変化を遂げたのでしょうか？また、新世代のプロジェクトは「投機ゲーム」の古い道から脱却しようとしているのでしょうか？

以下は代表的な8つのプロジェクトサンプルです。これらから、この分野におけるプロダクト設計、コンプライアンス戦略、資金調達ロジックの異なるアプローチを垣間見ることができます。

1. Polymarket @Polymarket

Polymarketは現在、世界最大規模の予測市場プラットフォームであり、22.79億ドルの巨額資金調達を受けています。10月にはニューヨーク証券取引所の親会社ICEが最大20億ドルの投資を約束し、Polymarketの投資前評価額は90億ドルに達しました。

PolymarketはShayne Coplanによって2020年に設立されました。Shayneは高校時代にEthereumのICO投資に参加し、暗号資産業界の「神童」として知られています。規制の圧力に直面し、Polymarketは2025年に1.12億ドルでCFTCライセンスを持つデリバティブ取引所QCEXを買収し、米国で合法的に運営する資格を得ました。Polymarketは予測市場のクラシックなモデルであり、ユーザーは暗号資産を使って現実世界の様々なイベントの結果に賭けることができます。「予測株式」を購入することで市場に参加し、各株式は特定の結果への賭けを表します。イベントの結果が明らかになった後、正しい結果の株式を保有するユーザーは相応の利益を得ることができます。すべての取引はオンチェーンで行われ、USDCで決済されるため、資金の安定性と透明性が確保されています。

2. Kalshi @Kalshi

Kalshiは米国初のライセンスを取得したコンプライアンス予測市場取引所であり、5.15億ドルの資金調達を受け、Paradigmとa16zがリード投資家です。

KalshiはTarek MansourとLuana Lopes Laraによって2018年にMITで設立されました。両創業者は困難ながらもコンプライアンスの道を選び、商品先物取引委員会（CFTC）と長期にわたり交渉し、最終的にCFTCの監督許可を得た初の予測市場プラットフォームとなりました。

Kalshiは2021年から米国市場を開放し、政治選挙、経済指標、スポーツイベントなど多様なイベント契約を提供しています。2024年には訴訟を通じて米国大統領選挙契約の上場資格を獲得し、コンプライアンスの空白を埋めました。

3. The Clearing Company @theclearingco

The Clearing CompanyはKalshiおよびPolymarketの元チームによって立ち上げられた予測市場で、すでに1,500万ドルの資金調達を受けています。CEOのToni Gemayelは、KalshiとPolymarketの両方でプラットフォーム成長責任者を歴任しました。

現在プラットフォームは準備・開発段階にあり、チームはユーザー体験の簡素化に非常に注力しています。新製品は一般ユーザーにとってRobinhoodやCoinbaseのようにシンプルであることを目指し、コンプライアンス設計も強調しています。構想から見ると、この種のプロダクトは両極端を避け、規制要件から大きく逸脱せず、かつユーザーの理解ハードルを下げることを目指していますが、実際に有効な市場エコシステムを構築できるかは今後の観察が必要です。

4. Limitless @trylimitless

Limitlessは高頻度予測市場で、分単位から日内の短期価格予測契約を提供しています。総額約700万ドルの資金調達を受け、著名な暗号ファンド1confirmationやCoinbase Venturesが投資しています。CJ Hetheringtonらによって2023年に設立されました。

Limitlessは2025年5月にBaseメインネットで正式ローンチし、その後Arbitrumなどのレイヤー2にも拡大しました。プロダクト形態は従来の契約取引所に近く、ユーザーは短期価格市場で「Yes/No」に賭け、あらかじめ設定された満期時にオンチェーンオラクルが結果を決定します。

データパフォーマンスを見ると、Limitlessは超短期取引のシナリオを大量に創出しており、一部ユーザーは迅速かつ明確な結果を利用して短期裁定取引を行っています。しかしそのため、コミュニティでは批判の声も上がっています。ユーザーからは、勝敗がほぼ決まっている、またはほとんど起こり得ない市場が手数料なしで上場されたことが指摘されており、例えば1.5時間以内のBTC価格市場など、このような「明らかな市場」は裁定者によって取引量が膨らまされていました。現在チームは市場生成ルールを最適化し、このような状況を防止すると回答しています。

5. Opinion @opinionlabsxyz

Opinion Labs（O.LAB）は現在500万ドルの資金調達を受けており、YZi Labsがリード投資家で、他の投資家にはEcho、Animoca Ventures、Manifold Trading、Amber Groupなどが含まれます。

現在の進捗として、OpinionはMonadテストネットで予測市場を開始し、コミュニティからのフィードバックを収集しています。また、Binance Labsとの協力関係もあります。

6. Melee @meleemarkets

MeleeはVariantファンドが支援する新進気鋭の予測市場で、「Viral Markets」の構築を掲げています。これは、あらゆるトピックが予測市場になり、ウイルス的な拡散でトラフィックを獲得するというものです。すでに350万ドルの資金調達を完了しており、投資家はVariantとDAO Builders Alliance（DBA）です。共同創業者兼CEOのMaxはAva Labsで戦略責任者を務めた経験があり、短編動画インフルエンサーブランドも立ち上げており、コミュニティ運営やビジネス戦略に独自の見解を持っています。

現時点でMeleeは開発・事前告知段階にあり、まだ正式にプロダクトをローンチしていません。公式サイトではウェイティングリストへの登録のみが可能で、Xアカウントを連携することで候補者として参加できます。公式発表によると、Meleeが提唱する「ウイルスマーケット」コンセプトには3つの特徴があります。すなわち、どんなトピックでも市場化できること、クリエイターの収益化サイクル、初期参加者へのインセンティブです。ソーシャルと予測市場の交差点を狙い、UGC（ユーザー生成市場）モデルで幅広い参加を促進しようとしています。

7. Football.Fun @footballdotfun

Football.Funは選手予測をコアメカニズムとし、現実のプロ選手をトークン化して取引可能な「株式」とし、ユーザーは選手カードを保有し、実際の試合でのパフォーマンスに応じてポイントや報酬を獲得できます。創業者のAdamはWolvesDAOコミュニティのメンバーで、すでに200万ドルのシードラウンド資金調達を完了しており、投資家には6th Man Ventures、Zee Prime、Sfermionなどが含まれます。

8. Trepa @trepa_io

Trepaは数値型予測を主軸とし、ユーザーがマクロ経済指標などの具体的な数値を予測でき、誤差の大きさに応じて異なるリターンを得ることができます。現在約42万ドルの資金調達を完了しており、リード投資家のColosseumはSolana Foundationの元成長責任者が設立したファンドです。

Trepaチームは2024年にシンガポールで設立され、コアメンバーはクロスドメインのバックグラウンドを持っています。現在はパブリックベータ段階で、ユーザーは特定の予測テーマ（多くはマクロ経済や金融データ、例えばある国のインフレ率や四半期GDP成長率など）を選び、数値スライダーを動かすか具体的な数値を入力して予測を提出できます。従来のバイナリ市場が「正解/不正解」だけなのに対し、Trepaは連続報酬メカニズムを採用しており、予測値が実際の結果に近いほど報酬が高く、外れても一部リターンを得ることができます。

コンプライアンスリスク：分野最大の不確実性

上記8つのプロジェクトを総覧すると、予測市場はプロダクト設計や技術実装において明確な分化が見られます。しかし、どのモデルであっても共通の課題は、規制がその法的属性をどのように定義するかという点です。

予測市場は本質的に「投機＋ギャンブル」の特徴を持ち、多くの法域でセンシティブな業界とされています。米国ではKalshiのような一部プロジェクトがコンプライアンスライセンスを取得しており、Polymarketも買収を通じて合法的な道を模索していますが、より多くのプロジェクトは依然として規制のグレーゾーンにあります。

さらに、オンチェーンプラットフォームであっても、以下のようなリスクは避けられません：

• 市場操作：一部の資金が価格方向に影響を与え、情報の有効性を損なう可能性がある
• オラクルリスク：データソースの誤りや攻撃により、決済ミスが直接発生する
• コントラクトセキュリティ：一部の新しいプラットフォームは完全な監査がなく、資金盗難のリスクがある
• 退出の難しさ：一部市場は流動性が限られており、資金が滞留するリスクがある

経験則として、予測市場ではALL-INで大きく賭けることは推奨されず、分散した小額多投戦略で個別市場の不確実性をヘッジするのが望ましいです。どうしても参加したい場合は、初心者はまずコンプライアンスかつユーザー体験の良いプラットフォームを選ぶことを推奨します。Polymarketは良いスタート地点です。

そのほか、初心者にとって最大のハードルは取引メカニズムと技術の理解です。予測市場では、注文は単純な買い/売りではなく、オッズや価格が示す確率を読み解く必要があります。例えば価格0.20は、市場がそのイベントが発生する確率を20%と見ていることを意味します。これは従来のオッズ換算とは少しコツが必要です。プラットフォームの初心者ガイドやネット上の解説記事をよく読み、バイナリ市場の損益計算を理解することをおすすめします。

最後に：ツールか、それとも投機の変種か？

予測市場は決して新しいものではありません。2000年前後には、多くのシンクタンクや経済学者が「情報統合と社会的コンセンサス形成」のツールの一つと見なしていました。しかし現実には、過去20年間、Web2のシーンでもオンチェーンアプリでも、予測市場は大規模なブレイクスルーを果たしていません。一方でコンプライアンスのハードルがユーザー規模を制限し、他方で投機的性質が公共機関の広範な支持を得にくくしています。

今回のPolymarketとKalshiの再ブームは、資本サイクルの中で新しいテーマを追いかけているだけかもしれませんし、市場のゲームツールの一つの補完に過ぎないかもしれません。しかしいずれにせよ、「市場構造を変える力」と呼ぶにはまだ遠い存在です。

この分野の本当の転換点は、プロダクト形態ではなく制度的な境界線にあります。完全なリスク管理と入場基準が確立されるまでは、冷静な観察を続ける必要があります。