Beam ChainはEthereumにもたらす5つの新しい変化とは？

Beam Chainは文字通りの新しいブロックチェーンではなく、Ethereumメインネット内部に構築された新しいインフラストラクチャであり、L1メインネットの取引速度、安全性、効率を大幅に向上させます。

執筆：Ebunker

ご存知の通り、EthereumはPoW（プルーフ・オブ・ワーク）で誕生し、2021年にPoS（プルーフ・オブ・ステーク）へと成功裏に移行しました。これについて、Ethereum FoundationのコアリサーチャーであるJustin Drakeは、「PoS導入当初はBeacon Chainが非常に効果的だったが、過去5年間でいくつかの『技術的負債』が蓄積されており、その設計はゼロ知識証明などの分散型システムの最先端技術を活用していない」と述べています。したがって、Ethereumのコンセンサスレイヤーには大規模なアップグレードが急務となっています。

最近バンコクで開催されたDevconでの講演で、EthereumリサーチャーのJustin DrakeはEthereumのコンセンサスレイヤーを抜本的に改革する提案「Beam Chain」を発表しました。

これはEthereumの長期ロードマップの一部であり、Ethereumが現在のZK暗号学の最先端の成果を活用し、新たなネットワークを立ち上げることなくネットワークのスケーラビリティとパフォーマンスを大幅に向上させることを目的としています。間違いなく、これは今後3～5年のEthereumにとって最も重要なアップグレードの一つです。

Beam Chainは文字通りの新しいブロックチェーンではなく、Ethereumメインネット内部に構築された新しいインフラストラクチャであり、L1メインネットの取引速度、安全性、効率を大幅に向上させます。Beam ChainをEthereum 3.0と解釈する人もいますが、これは誤解です。なぜなら、Beam Chainはコンセンサスレイヤーの問題のみを解決し、データレイヤー（blobチャネルなど）や実行レイヤー（Ethereum Virtual Machine（EVM）など）は変更しないからです。

Beam Chainの5つのコア変革は以下の通りです：

1. より高速なブロック確定：4秒スロットタイムと単一スロット最終性の導入

2. 分散性を犠牲にしない：現在の分散性保証を維持または改善

3. ステーキングのハードルを下げる：ETHステーキングを32ETHから1ETHへ大幅に引き下げ

4. 一般ユーザーの保護：ブロック再編成に基づくMEVを排除

5. 未来志向：Ethereumネットワークに量子耐性を持たせる

Beam Chainのアップグレード方針と原理

1. ブロック生成量の増加

より高いスループット：Beam Chainはブロック生成量を現在の3倍に増やし、Ethereumの取引能力を向上させます。

検閲耐性：FOCIL（Fork Choice Inclusion List）の導入により検閲耐性が強化され、悪意のある者によって取引が容易に排除されないようにします。

実行オークション＆バリデータの分離：バリデータは実行オークションを利用して分離され、より強力なパフォーマンスと分散性を確保し、より多くのユーザーがMEVの影響を受けにくくなります。

より高速なファイナリティ：Ethereumは単一スロットファイナリティと4秒ブロックタイムを実現し、取引の確定を迅速化しネットワーク効率を向上させます。

興味深いのは、取引所が1/32、2/32、3/32…といったブロック確定を待つ必要がなくなり、将来的には単一ブロックで確定できるようになることです。

2. ステーキングの改良

発行モデルの改良：バリデータへの報酬発行モデルを変更し、ステーキングによるリターンを増やします。

ステーキング要件の引き下げ：独立バリデータは1ETHのステーキングで済み、現在の32ETHのハードルより大幅に低くなり、独立ステーキングがより簡単かつ普及します。

Ethereumが速度を上げつつ、より多くのノードがコンセンサスに参加でき、ハードウェア要件も大きく変えず、ステーキングのトリレンマを突破できるのは、ZK技術のおかげであり、業界の最前線を大きくリードしています。

3. セキュリティの強化

ポスト量子暗号：Ethereumは量子耐性暗号を導入し、量子コンピュータの脅威からネットワークを守るため、主流ブロックチェーンとして初めて量子耐性への一歩を踏み出します。

zkSNARKとzkVMの統合：ゼロ知識証明（ZKP）はzkSNARKとzkVMを通じてEthereumに統合され、プライバシー、スケーラビリティ、セキュリティをさらに向上させます。

ブロックチェーンのSNARK化（SNARKification）：EthereumはRISC-Vを活用してブロックチェーンをSNARK化し、このプロセスにより証明生成の効率とスケーラビリティが向上します。SNARKはコンパクトなゼロ知識証明の一種で、情報を開示せず、証明者と検証者の間でやり取りを必要とせずに、情報を持っていることを証明できます。

要するに、Ethereum全体を直接ZK化する、とまとめられます。

ランダム性の強化：Ethereumは強力なランダム性も導入し、バリデータ選出などネットワークの重要なプロセスの公平性を確保します。

MEVリスクの低減：より優れた検閲耐性により、サンドイッチ攻撃などのボットの氾濫を最大限抑制します。

4. 動作原理

Ethereumの現行コンセンサスレイヤー（Beacon Chain）の設計が確定して以来、暗号学者はSNARK分野で大きな進展を遂げました。Ethereumの状態遷移関数（バリデータがブロックチェーンの正しい状態を維持するために統合する状態変化メッセージ）をSNARK化することで、4秒スロットタイムと単一スロットファイナリティが実現できます。

一方で、ブロック生成とファイナリティ時間の短縮は、Ethereum L1の取引体験に対する待ち時間を減らし、ポジティブな影響を与えます。

また、リモートブロック再編成戦略により取引から抽出される潜在的な価値を排除し、コンセンサスレイヤーの技術的負債を減らすこともできます。

さらに、SNARK化によりEthereumネットワークは量子耐性を持つようになり、これは将来のブロックチェーンに不可欠な機能です。

Beam Chainは以下の観点からEthereumのアップグレードを推進します：

シャーディングによる処理速度の向上：Ethereum Beam Chainはシャーディング技術を用いてデータをより小さな部分（シャード）に分割し、複数の取引を同時に処理します。これにより取引のボトルネックが減少し、取引時間が短縮されます。

量子計算耐性のセキュリティ：Ethereumは時代を先取りした暗号技術を活用し、将来のスーパー量子コンピュータであってもネットワークの安全性が損なわれないようにします。

Ethereumロードマップとの統合：Beam Chainは独立したネットワークではなく、今後5年間のEthereumの拡張とセキュリティ向上のロードマップにおける統合段階です。

5. 重要な意義

Ethereumが増加し続ける分散型アプリケーションを処理する能力にとって、Beam Chainは極めて重要です。スケーラビリティを高め、取引コストを下げ、全体のセキュリティを向上させることで、ネットワークは時間の経過とともにより多くのユーザーや複雑なアプリケーションをサポートできるようになります。

SNARKベースの証明のもう一つの大きな利点は、標準的なハードウェアを備えた一般的なステーカーでも上記のパフォーマンス向上を実現できることです。ステーキングのハードルが32ETHから1ETHに下がることで、ネットワークパフォーマンスの向上とともにEthereumステーカーの分散性も改善されます。

特にハードルが下がることで、関連するハードウェアデバイス、例えばEbunkerのeNodeなどと組み合わせれば、家庭用バリデータデバイスが一般家庭に普及し、Ethereumは依然として世界で最もノード数が多く、最も分散化されたパブリックチェーンであり続けます。

Beam ChainのビジョンはEthereumを即座に変化させるものではなく、長期的なロードマップを大きく変更するものでもありませんが、その採用によりロードマップ開発の優先順位が変わり、特定のコンポーネントの開発が加速されます（例えば、現在のロードマップではいくつかの重要なアップグレードが2029年に設定されていますが、Beam Chainにより重要なアップグレードの到来が早まる可能性があります）。

Beam Chainが十分なコミュニティサポートを得られれば、開発者は来年から仕様策定を開始し、2026年に開発クライアントチームがプロダクションレベルのコードを作成、2027年にテストを行い、最終的にEthereumメインネットに安全にデプロイできるようになります。Beam Chainの実装はまだ遠いように見えますが、分散型開発のオープンソースソフトウェアにとって、これらの安全な冗長性は極めて重要です。

要するに、Beam ChainはZK化の道を通じて過去の「技術的負債」を一挙に解決し、Ethereumの「世界クラスの分散性」を維持しつつ、L1機能を大幅に改善することが期待されています。

同時に、新しいアプローチによる量子耐性などの長期的なソリューションは、Ethereumのコンセンサスレイヤーを「メンテナンスモード」に置き、今後数十年にわたりEthereumが安全・高効率・適応性を維持し、破壊的な再設計なしに将来のイノベーションを実現できるようにします。

Ethereumは依然として長期的な戦略に取り組み続けており、これはブロックチェーンおよび業界全体にとって非常に励みになるアップデートです。現在の活況な市場環境の中でも、Ethereumに対する楽観的な基盤を維持できる理由となっています。